生き物・建物とのかかわりで
エクステリア・ガーデニングを考える

 自然とのかかわりでバランスを欠く無理な構造の建物は、シロアリだけでなくさまざまな生き物に対応できない事態を招き ますが、エクステリアやガー デニングでもまたデザインだけでなく自然とのかかわりで原則的な設計をしないとあとで困ることになります。テレビに登場するガーデニングの「匠」なるもの の作り上げる庭には、自然を利用するように装いながらも自然をまったく無視し、居住者に大きな負担をかけてしまうものが よく見られます。
 ここでは、エクステリアやガーデニングを生き物や建物とのかかわりで考えます。

木杭・枕木などの接地には覚悟が必要

  わが国における大多数の地域の健全な地面にはヤマトシロアリや木材腐朽菌など分解者と呼ばれる生き物が住んでいます。そこに木材などの死んだ植物を接触さ せれば当然にも彼らによる分解作用を受けます。その結果、大きくて硬い木材なら多少見苦しくなっても形は残りますが、薄い板や柔らかな材だと原形をとどめ なくなります。
 庭先に枕木などを埋め込んだりすれば彼らの餌になるのは当然ですが、それだけでなく、地表が覆われることをきっかけにその直下に住み着きます。防腐剤などの薬剤処理は気休め程度の効果しかありません。
 枕木を設置した翌年にヤマトシロアリの羽アリが枕木の隙間から出るという現象は、もともと直下に住んでいたシロアリを枕木の裏側にまで引き上げること で、新たな環境に適応しようとしたシロアリが羽アリを出すのです。
 シロアリは空気と雨水を嫌うので露出した地表の部分よりも敷石や犬走り、玄関ポーチといった地表が密閉された部分のほうが住みやすいのです。
 木杭でも接地部をコンクリートで覆ったほうが露地よりもはるかにシロアリ被害の可能性が高まります。
  ただ、ヤマトシロアリや木材腐朽菌の場合、庭先の枕木や木杭に住み着いていたからといって建物に直ちに影響があるわけではないので被害は枕木や木杭だけの ものとして考えればいいのですが、何らかの形で早晩生物による劣化が起きて生き物の出入りが見られるようになるということだけは念頭に置かなければなりま せん。
 したがって、定期的に取り替えるなどの対応をしていく覚悟がなければ、こうした木材を直接地面に設置するのは避けて、コンクリート基礎や金属によって地 面から離す必要があります。
 

▲ こういうものは必ず劣化するものと覚悟すべきです。
ただ、崩壊するようなことはまれですが‥。


▼ 木材であるかどうかにかかわらず地表を覆うと、それなりの生き物が直下で暮らし始めます。

建物の基礎を覆わない

 建物の基礎は飾りではありません。建物という木材が生き物に分解されないように地面との間に距離を置くためにあるのです。
 と ころがよく見られるのが建物の外周の基礎につなげてレンガなどで花壇を作ることです。つまり基礎を花壇の土止めにしてしまうのですが、これでは土壌生物が 空気に触れずに土台まで容易に到達できてしまいます。花壇を作るのなら花壇全体を建物から離し、基礎を空気にさらす必要があります。
 コンクリートのテラスも基礎を隠してしまうほどの高さにするのでなく、地表よりもやや高い程度にとどめるか、あるいはテラスと基礎の間にはっきりとした メンテナンス可能な隙間を作る必要があります。
 また、基礎を覆うという点では花壇やテラスのような大きなものだけでなく柵の支柱や杭も同じですので、こうしたものも建物からある程度は離しておく必要 があります。
 以前はアース線などを基礎につけた木材に沿って地下に入れていたのですが、ここからシロアリが侵入したケースは少なくありません。

▲ こんなことをすれば建物外周のシロアリや生き物を建物に導くだけでなく、土台や外壁の劣化を招きます。
 短期間に改装を予定している店舗ならデザイン優先でも改装時に対応可能ですが、民家となるとそうもいきません。土台などの構造材に深刻な劣化が知らない うちに進行します。

基礎はすべて外気にさらす
これが原則です。

ウッドデッキの注意点

 いうまでもないことですが、ウッドデッキの床束や階段などはすべて束石などの上に乗せて設置し地面から引き離すことが原則です。あるいは、ウッドデッキ 全体を一枚板状のコンクリートの上に乗せてしまうのも有効です。ただし周辺部は注意が必要です。
 また、ウッドデッキの床下も点検できる高さやもぐれる仕組みがないと後で困ります。しかも点検できるように管理することが大切で、いくら床が高くても床 下に草が生い茂ってシロアリの蟻道や腐りの兆候を見逃してしまうのでは意味がありません。
 ウッドデッキの多くは建物の外にあって雨ざらしになるので傷みが早く、早いものでは10年前後で修理が必要になります。逆に言えば、定期的な修理を覚悟 するのなら上記の対応ができなくでもいいといえます。
  しかし、中には雨ざらしにすることを想定していないような構造のものがあります。これらは安易にビス止めだけで作られ、薬剤処理されているから大丈夫だと 思わされ、水の逃げ場や乾燥の仕組みがなく、さらに木材の選定が間違っていることが多いので、木材の大きな反りや腐りが急速に進行します。
 外国で耐久性が高いとされる木材でも、日本ではそれほどでもない場合が多いとも言われています。また集成材は外部に使うと劣化しやすいので雨のあたる部 分に使用すべきではありません。ある民家では築10年で集成材のベランダが変形して利用できなくなっていました。
 一方、基礎断熱の家では断熱材経由でウッドデッキにシロアリ被害が出たケースもありますので、基礎断熱の場合は、建物本体だけでなくウッドデッキとの接 合部にも注意が必要です。 

物置やガレージなど簡易な建物について

  物置などの基礎を本宅並みに作るのならよほど問題はないのですが、多くの場合はブロックで基礎を作って土台を乗せてしまいます。こうなるとブロックの接合 部や穴 がシロアリの侵入路となってしまいます。しかもブロックの基礎に仕上げモルタルを塗って仕上げるとさらに複雑になりシロアリが侵入しやすくなります。
 こういう場合は基礎パッキンで基礎と土台を離して侵入を見やすくするか、基礎よりもやや幅の広い金属板を基礎と土台の間に敷いて蟻道を迂回させることで 侵入を把握しやすくすべきです。
 あるいは内壁の壁板を貼らずに間柱を露出させれば、仮に傷んでも駆除が簡単で、補修も日曜大工で補修できます。
 もっとも、簡易な建物では「被害が出てから対処する」という対応でも、ヤマトシロアリなら一応成り立つ考え方です。つまり建物への価値評価の違いによっ て対応が異なってもいいはずです。

紫外線による劣化も

 木材の劣化はシロアリや腐朽菌などの生物劣化だけではありません。紫外線によるものもあります。
  柔らかな木材の場合年輪の硬い部分が浮き彫りにされて、まるでシロアリの加害痕のようにも見えます。実際ある展示会では明らかに紫外線による劣化にもかか わらずイエシロアリ被害として展示されていた木製品もありました。こうした擬似シロアリ被害は北欧などシロアリのいない国の木造建築でもよく見られます。
 し たがって木柵や塀などに薄くて柔らかな材料を使う場合、生物に起因しない劣化があることも承知しておく必要があります。しかも、塗料による保護を したつもりでも、紫外線を通してしまう塗料の使用や薄い塗り方だと、塗料と木材の間が侵されて塗料が早期に剥げ落ちてしまうことにもなります。つまり、紫 外線対策は木材だけでなくその保護の仕方にも注意が必要です。
 もっとも、木材さえしっかりしていれば紫外線で劣化しても、それはそれとして味わいを感じることもできます。
  また、長年経過したプラスティックのプランターは持ち上げることもできないほどもろくなってしてしまいます。このように紫外線による劣化は木材だけでなく プラスティックなどにも及びますので、某テレビ番組のように廃材のプラスティック製品をエクステリアの一部に再利用する場合は注意が必要です。

旅館・ホテルと民家とは違う

  温泉旅館やホテルと民家を混同した庭造りが時折見られます。縁側の近くや床下まで池を配置したり、玄関ポーチや玄関内に水の流れを作ったり、建物の外壁に 岩を貼り付けたりするもの、あるいは、側溝に木杭や丸太を並べたり、数多くの落葉樹を植えるとか、ひどい場合は実が落下して腐る柿などの樹木を側溝や建物 近く に植えてしまうものもあります。
 旅館などの営業用の建物は日常的に手を入れるために特殊な作りをしても問題ないのですが、民家ではとくに趣味でそうしない限りは日常的な手入れは「余計 な仕事」となり居住者にとって大きな負担になります。
 また、伝統的な工法の中には他の工法とのかかわりで有効だったり、頻繁な手入れを前提にするものがあり、こうした環境がないなら伝統的な形をあきらめな ければなりません。
  たしかに誰でも当初はさまざまな「意気込み」や「つもり」はあるでしょうが、人間そういうものがよほど自分の本来の性分と一致していないなら長続きするも のではなく、必ず「あきらめ」に支配されて建物や庭先が放置されるようになります。お金が余って困る人は専門に管理人を雇えばいいのですが、圧倒的多数の 庶民においては自分と家族の負担がついて回るようになります。
 
=== エクステリアやガーデニングでもシロアリ技術者に相談を!